に探る片手

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に探る片手

に登らずにはおくものかと覚悟を決めるにいたったのであった。
 余はじっとりした薄闇のなか、年|旧《ふ》り磨耗した階段を、とぎれる箇所まで登りつめると、それ以後は、上方に通じるささやかな足がかりにあやうくすがりつきながら進んだ。階《きざはし》の一つとてなき岩の円筒は、総毛だつほど恐ろしきものであった。黒ぐろとして、見事に荒れはて、わびしさきわまり、闖入《ちんにゅう》におびえた蝙蝠の音なしの翼にて舞うさまは、その不吉さいいようもない。しかしながら、登攀《とうはん》の遅々として進まぬことが、さらに血も凍るばかりに恐ろしかった。いかに登れど、闇はいっかな薄らぐことなく、幽鬼の巣食う古びた土地に感じるがごとき、新たな悪寒を余はひしひしと身におぼえていた。何がゆえに明るみにとどかぬと怪しみながら、身を震わしていたが、まこと勇気さえあれば、下に目をむけたことであろう。忽然として夜が訪れたのではないかと思いつつ、外がのぞめる窓を求め、もしあれば、おのれの達した高さをうかがわんとて、あいている片手で探りをいれたが、いかさま徒《あだ》な努力ではあった。
 何も目に見えぬまま、なか窪みで切り立つ絶壁を、恐れおののきながら果しなく這いあがりつづけた後、余は突如としてculturelle 香港頭が固いものにふれるのを感じとり、屋根あるいは少なくとも階らしきものに達したことを知った。あいている片手を闇のなかにあげ、行手をはばむものを探ってみれば、びくとも動かぬ石ではないか。こうして余は、ありとある支えにすがりつきながら、ぬるぬるした壁の周囲を命がけでめぐりはじめた。ついが押せば動く箇所のあることを告げるや、余はふたたび登りはじめ、空恐ろしい登攀で両の手がふさがれているゆえ、平板とも扉ともつかぬものを頭で押し開けた。一条の光もさしいってはいなかったが、手をさらに上へあげたとき、余の登攀がさしあたり完了したことがわかった。何となれば、その平板こそ、塔の下部より周囲の広い平らな石床、どうやら広びろとした望台のようなものの床に通じる、その開口部の落とし戸に相違なかったからである。余は苦労して落とし戸の口に這いずりこむと、どっしりした戸が元にもどらぬようあれこれためしてみたが、しょせんかいなき試みではあった。疲労困慰の体《てい》で石の床に横たわった余は、平板が閉じて生じる不気味な残響を耳にしながら、要あるときに開けられればよいがと願っていた。
 いまや呪わしい森の枝という枝を遙かにこえる、途方もない高みにいるのだ、余はそう信じこみながら、床からようやく身をおこすと、空、そして書物で読んだ月と星がはじめて目にできるやもしれぬ、窓を求めて手探りしたが、reenex 效果手をのばすたびに、希望は微塵にくだかれた。見いだしたものは、心かき乱される大きさの、小癩《こしゃく》な長方形の箱を載せた、巨大な大理石の棚また棚ばかり。余は熟考に熟考を重ね、眼下の城から永劫の歳月たちきられているこの高みの房室には、いかな古昔《こせき》の深秘《じんぴ》が潜んでいるのかといぶかった。と、そのとき、余の両手は思いがけず戸口に行きあたった。戸口には、妙な彫刻がほどこされ、表面なめらかならぬ石の杭門が配されている。扉には錠がおりていたが、余は渾身の力をふりしぼり、なべての障害を圧して、扉を内側へとひき開いた。扉が開くや、絶えて知らざる至純の歓喜が余に訪れた。凝った飾りのある鉄格子をとおして、戸口から昇りはじめる短い石の階段に穏やかにさしいっているのが、夢、そして記憶とも呼べぬおぼめく幻影のなかでのみあおぎ見た、耿々《こうこう》と照り輝く満月の光だったからには。
 余は城の最上点をきわめたのだと思い、戸口を抜けて階段を駆け登りはじめたが、数段登ったところでにわかに月が雲に隠されたことで實德金融、足がつまずき、あとは闇のなかを手探り足探りでそろそろ進みつづけた。鉄格子にようやくたどりついたときも、まだ真闇《まやみ》

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